「今ね、自分の子どもを殺しちゃったんですよ」
昨年7月4日夜、110番通報してきた男性がそう告げた。電話がつながったまま、男性は2階にあがり、妻に伝えた。「かあちゃん、俺、おきよを殺しちゃったぞ」
1階に下りた妻の泣き叫ぶ声がした後、電話口からは「これで良かったんだよ。もうどうしようもない……」と語りかける男性の声が聞こえた。
夫婦が名前にちなんで「おきよ」と呼んでいた次男(当時44)には重度の知的障害があった。殺人罪に問われた平之内俊夫被告(78)は、裁判で次男とともに過ごしてきた日々を語った。
今年2月17日、千葉地裁での初公判。スーツ姿の被告は背中を丸めながら証言台に向かった後、「間違っていることはありません」とはっきりとした口調で起訴内容を認めた。
被告は昨年7月4日午後8時20~35分ごろ、千葉県長生村の自宅で、次男の首をテレビアンテナのコードで絞めて殺したとして起訴された。
夫婦で40年以上、育ててきた子をなぜ手に掛けたのか。法廷での言葉からたどる。
検察側の冒頭陳述などによると、被告は神奈川県平塚市生まれ。中学卒業後、東京都内の飲食店で料理人として働いていた時に妻と知り合い、1976年に結婚した。翌年に長男が、2年後に次男が生まれた。
重度の障害ある息子2人
長男には重度の知的障害と身体障害があった。次男も2歳のころに知的障害があることがわかった。次男は療育手帳A1という最重度の知的障害で、加えて変形性股関節症という身体障害もあった。障害支援区分は最も高い「6」だった。
2人は小学校から高校までを、神奈川県内の養護学校で過ごした。卒業後は、県立障害者施設「中井やまゆり園」などの三つの施設を短期利用しつつ、夫婦が同県小田原市の自宅で2人を介護してきた。被告はラーメン屋やサービスエリアの飲食店で働き、その後は警備員のアルバイトで家計を支えた。
歩くことができず、おとなし…